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それがグローバルな活動として定着化

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出来ることから始める。
それがグローバルな活動として定着化

NEC

NEC Make-a-Difference Drive

世界各国に展開するNECグループ社員による地域貢献活動「Make-a-Difference Drive(MDD)活動」がスタートしたのは1999年のこと。日本において、まだCSRという言葉が定着する以前のことだ。
それから10年以上が過ぎた2009年、社員みずからが地域貢献に取り組む、この活動への参加者は、28カ国953拠点で働く17万4000人(延べ人数)まで拡大した。MDDは、NECグループの企業文化の一部として、確実に定着しようとしている。
MDDは、いかにして世界各国のグループ社員に定着したのか――。スタート当初からその活動に携わってきた、NEC CSR推進部の山辺清和氏と秋山星司氏にその理由をうかがった。

NEC MDDの説明資料(PDF)がダウンロードいただけます。

CSR 1

NEC CSR推進部 社会貢献室
マネージャー 山辺清和氏(左)
CSR推進部 社会貢献室
主任 秋山星司氏(右)

インタビュー
Q MDD活動がスタートした経緯と、その狙いを教えてください。

秋山●活動がスタートしたのは、NEC創立100周年にあたる1999年のこと。ボランティア活動を通し、地域社会に貢献することで、それぞれの地域に根ざした社会性の高い企業精神を醸成していくことがその目的でした。
また、グローバルに事業を展開するNECグループ社員間で、価値観の共有化を実現していくこともその大きな狙いの一つでした。

Q すると当初からグローバルな展開を前提にしていたわけですね。

秋山●はい。「Make-a-Difference Drive」という名称も、世界的な展開を前提に、社会貢献活動の推進を目的に設立されたNEC米国財団と相談の上で決定されたものです。聞きなれない言葉かもしれませんが、「差別化を図る」という意味と共に、「昨日までの自分は違うことをする」というニュアンスも含んでいます。
ちなみに、ハートをモチーフにした活動のロゴマークは、米国現地法人の従業員が考案したもの。活動がスタートして間もなく、「このようなマークを考えてみたのですが」と事務局に送られてきたものです。

MDDのロゴマークは、米国現地法人の社員がデザインしたもの。活動が定着化したある日、事務局に送られてきたものという。

MDDのロゴマークは、米国現地法人の社員がデザインしたもの。活動が定着化したある日、事務局に送られてきたものという。

Q グローバルな展開を図る上での苦労も多かったのでは?

秋山●実は海外拠点間のネットワークを確立することが一苦労でした。NECグループでは、以前から欧米や国内の生産拠点を中心に地域貢献活動が積極的に行われてきたにも関わらず、情報の集約が確立していなかったのです。そのため、200社を越すグループ企業の連絡先一覧をめくりながら、一社ずつ電話を掛けたりメールを送ったりして、窓口を確認していったことを覚えています。最初は海外のNECグループの地域貢献活動の英文広報誌作りから始まったのですが、これがMDDへと発展して行きました。

01NEC中国など9社/NECの森
社会貢献への意識の共有化を図るため、各種ツールを用意したことも工夫の一つ。活動旗は20セット制作し、要望に応じて世界各地の拠点へ貸し出されている

山辺●方向性を各拠点の担当者に説明するという面でも、苦労がありました。国内であれば、全国の担当者に集まってもらうことも可能ですが、海外拠点の場合、コスト的にそれは不可能です。そこで担当者が海外出張した際に、現地で説明会を開くなどして対応しました。

Q MDDの活動の概要を教えてください

秋山●活動には、地域・組織単位で行われる「自主活動」と社会貢献室主催の「共通活動」があります。使用済みプリペイドカード、使用済み切手等の回収活動などを行う共通活動は、主に国内拠点の社員を対象にしたもの。自主活動は、国内外の事業拠点が独自に行う活動で、その内容は地域の実情に応じてさまざまです。
企画立案は、各拠点1~2名のMDDコーディネーターが行っています。2011年現在、コーディネーター数は国内292名、海外120名。毎年7月に本社担当役員から、各拠点のトップにその任命をお願いする形をとっています。各拠点のCSR担当役員から新入社員まで、さまざまな立場の社員がその役割を果たしています。また、コーディネーターとしての活動は職務時間外に行うことが原則になっています。

Q なるほど。コーディネーターとしての活動そのものがボランティアという訳ですね。でも、当初は何をすればいいのか戸惑うコーディネーターも多かったのでは?

秋山●確かにその通りです。そのため、詳細な活動マニュアルを作成することが我々の最初の仕事でした。マニュアルは、地域社会との連携を構築する方法からプレスリリースの作成方法まで、多方面に及びます。
またコーディネーターの方には、5つの原則を前提に企画を立案するようにお願いしています。それは
①出来ることからはじめ、多くの社員の参加を図る
②楽しい雰囲気を演出する
③地域の市民団体、行政機関から知恵を借り、積極的に協働する
④成果を記録に残す
⑤マスコミに情報を提供するなど、広報活動を積極的に行う
という5点。

特に、楽しく参加できる仕掛けをつくることがコーディネーターの腕の見せ所だと考えています。例えば中国では、現地8法人合同の植林活動が毎年行われていますが、植樹後は各社対抗の綱引き大会を行うことが恒例になっています。
また、コーディネーターの皆さんには、できれば事業と連動したNECらしい、肩の凝らない、継続できる企画をともお願いしています。
地域の子供たちを対象としたパソコン教室などがその例になります。

Q 広報活動という言葉が出てきましたが、活動を継続する上で、マスコミに取り上げられるなどの広報成果はやはり重要ですか?

秋山●社外のメディアに取り上げられることは、参加意欲を高めるとともに、NECグループの企業イメージ向上にもつながると考えています。
さらに経営層に活動への理解を得ていく上でも、広報という項目は重要になります。そのため、広報成果はどんな小さな記事でも必ず役員に回覧するように指示を受けています。
また、MDDは「ボランティア功労者厚生労働大臣表彰」(厚生労働省/2001年)、「企業の社会貢献賞 大賞」(朝日新聞文化財団/2002年)などの賞をNECへいただいてきましたが、そうした外部機関からの評価も、社内の理解を得ていく上で大きな意味を持ちます。

独自活動は、活動終了後にその内容を事務局に報告することが義務付けられている。報告書は専用フォーマットが用意され、必要項目を記載した上で、事務局メールアドレス宛に写真などとともに添付ファイルとして送付する。こうしたプロセスを通して、本社社会貢献室が活動を一元的に把握し、世界の拠点で情報共有を図る点もMDDの特徴のひとつだ。

秋山●実は、報告書の提出時期が重なってしまうことも活動の課題でした。MDDでは各年度の優秀活動をCSR AWARDとして表彰していますが、毎年3月末までの1年間の活動がその対象になります。
そのため、例えば5月に行った活動でも、翌年の3月を待って報告を行うケースが少なくなく、3月に報告が集中し、その結果我々の業務もその時期に過大な負荷が掛かるようになってしまったのです。
その解決のため導入したのが、月間MVPという毎月の優秀活動を表彰する制度でした。表彰のみで副賞等は用意しませんでしたが、導入後は年間を通して、拠点からの報告が届くようになっています。

活動したらすぐに報告――。この意識が定着化したことで、月間MVP制度は2010年度を最後に廃止されたが、このエピソードからは「表彰する」という制度そのものが各拠点のモチベーション向上に大きく寄与している姿がうかがえる。

Q CSR Awardの選考はどのように行っているのでしょう?

秋山●表彰には「大賞」のほか、事業の延長上のプログラムから選ばれる「事業連動賞」、3年以上イベントを継続してきたプログラムから選ばれる「継続賞」などがあります。
基本的に社会貢献室のメンバーでその選考を行いますが、海外・国内のそれぞれで最も優秀なプログラムを選ぶ大賞だけは、社会貢献室で事前選考した10候補に対するコーディネーターの投票で決定しています。

世界各国に展開する拠点間の情報共有を図る上で重要なツールとなっているのが、毎年8月前後に発行する英語・日本語併記の報告書だ。 当初は翻訳作業も秋山氏が行っていたという同報告書の2009年度のボリュームは、全64ページ。翻訳こそ外注化したものの、その編集作業は今日でも秋山氏を中心とした2名で行っているという。その内容はMDDのポータルサイト上にも掲載されている。

秋山●グローバルな活動を進める上では、言葉の問題も存在します。例えば、海外拠点からの報告は、英語で行うようにお願いしていますが、英語を公用語としない国や地域からの報告はたどたどしくなることは否めません。そのため、冊子やウェブサイトに掲載する際は、社内のネイティブスピーカーに英文の添削を依頼するなどしています。

NECグループ中国現地法人8社と行政との協働による北京郊外の植林活動は、過去5年にわたり続けられている。
NECグループ中国現地法人8社と行政との協働による北京郊外の植林活動は、過去5年にわたり続けられている。

山辺●報告書やポータルサイトの制作は、活動の認知度を高めるだけでなく、コーディネーター間の情報共有を図るという狙いがあってのものです。特にポータルサイトでは過去5年間の活動を紹介しているので、コーディネーターの方々にはぜひ活動の参考にしてほしいと考えています。

海外部門の大賞は近年、「貧困漁村への教育支援と自活訓練」(NECインドネシア/2008年)、「貧困地区への無料医療サービス」(NECトーキンフィリピン/2009年)といったアジア地域の拠点の受賞が続いている。このように、欧米や国内だけでなく、アジア地域の社員の活発な活動が目立つ点もMDDの特筆すべき点だ。

Q アジアの事業拠点で働く社員へのCSR教育に苦慮する日本企業も少なくないと聞きます。そうした中、MDDという社員参加型の社会貢献活動は、なぜアジア地域でも定着化したのでしょう?

秋山●一口にアジアといっても、それぞれ国民性は違います。例えばカトリック教徒が多いフィリピンの場合、隣人愛の実践としてボランティア活動が文化として根付いているという面があります。
また、地域の企業文化という側面にも目を向ける必要もありそうです。欧米に比べアジア地域の企業組織には、トップを中心にしたアットホーム的な関係が存在するように感じます。
特にアジアの生産拠点では、トップが率先してMDD活動を行っているケースが目立ちます。その背景には業務外の活動であるMDDを利用して、アットホーム的な求心力を高めていきたいという狙いもあるではないでしょうか。例えば台湾の現地法人では、毎年トップが率先してボランティア活動に参加することで多くの社員も参加、社会的にも高い注目を浴び続けています。

Q トップが積極的に牽引したことが定着化にもつながったという訳ですね。

秋山●こうした活動では、トップからの働きかけはやはり大きな意味を持つと考えています。「上司に言われて参加したが、意外に面白かった。これなら次も参加したい」というケースが少なくないと思うのです。
ちなみに、これはアジア地域に限らないことですが、参加者に感想をうかがうと「内面が豊かになった」「これまで意識しなかったことに気づかされた」など、自身の内面的な変化をまず挙げるケースが多い点もMDD活動の特徴のひとつです。

Q 今後の課題はどのような点にあるとお考えでしょうか?

秋山●ひとつはコーディネーター間の情報共有をさらに高めていくことです。
たとえば、アジア地域で行われているプログラムを俯瞰すると、地域の貧困問題に関するものが目立ちますが、環境関連では植林と海岸清掃が大部分を占めています。しかし、各拠点間、例えばタイやフィリピン、シンガポールのMDDコーディネータの間で植林活動の具体的方法論を共有しているかというと、そこには至っていないのが現実です。
やはり単に活動を継続するだけでなく、そのクオリティを高めていく取り組みも重要です。日本国内であれば一カ所に集まって意見交換を行うことも可能ですが、海外拠点の場合、それは現実的ではありません。そこで、既存の社内ネット(SNSなど)を活用しMDDコーディネータ同士がネットで情報交換する仕組みを築くことはできないものかと考えています。
さらに2011年度からは、社会的な要請に応えるためにも、生物多様性をテーマにした活動を強化していきたいと考えています。

山辺●現在、約6割の事業拠点でコーディネーターが登録されていますが、その割合を高めていくことも課題のひとつです。

ちなみにMDDではこれまで、スマトラ大地震(2004年)、ハイチ大地震(2010年)などの世界的な自然災害をきっかけに活動拠点数や参加者数を大きく増やしてきたという。
Q MDDの仕組みを自社に取り入れようとする企業へのアドバイスは?

山辺●まずは社内のネットワークを粘り強く築いていくことが大切です。海外拠点の場合は国内に比べて従業員の入れ替わりも多いため、常時、担当者の情報を更新していく必要があります。
さらにトップマネジメントを活動に取り込むことも大切です。当社では毎年、年末に役員懇親会が開かれるのですが、我々はそれに先立ち、秘書を通じて各役員に外国コイン等の寄付を募り、当日は会場入口でその回収を行うようにしています。些細なことかもしれませんが、実際に活動に参加することで活動に対するトップの理解も確実に高まるはずですから。

Q この活動を自己採点するなら百点満点中、何点でしょうか?

秋山●辛く採点して60点というところですね。データ整理や翻訳という地道な業務を着実に行えた面は評価したいと思いますが、「まだまだ、もっともっと出来ることがあるのでは」とも感じていますから。

山辺●私は70~80点はつけたいと感じています。他社から、我々の活動を参考にしたいという声が数多く寄せられるなど、先行する取り組みを具現化できたことがその理由。マイナス要因はコーディネーターが情報交換を行う仕組みを確立できていないこと。今後は、海外も含め多様な交流の仕組みを構築していきたいと考えています。


孤児院で、ミミズを使ってたい肥をつくり、有機野菜を社員が子どもたちと栽培するルネサスKLマレーシア(当時のNECセミコンダクターズ・マレーシア)の活動。収穫される野菜は子どもたちの食事になる。
★取り組みのヒント
  • 名称を含め、スタート当初からグローバルな展開を前提にした活動の仕組みづくりを行った。
  • 本社が活動内容を決定するのではなく、各事業拠点にその権限を委譲。それは地域ニーズを反映した活動につながっている。
  • 表彰制度も含め、世界各地における活動を全社的に共有する仕組みを構築。それは各事業拠点におけるモチベーション向上にもつながっている。
  • 本社担当者を含め、出来ることから行うというスタンスで、地道な活動を根気よく続けた。